コマンドの達人

行動を理解してからコマンドを乗せるべし

 しばしば人はいきなり愛犬にコマンド(号令)をかけてしまいます。犬が日本語を理解していないのにどんどんコマンドをかけてしまいます。そして愚かな飼い主は「うちの犬はバカだ」と言うわけです。

 もしあなたの家に外国の学者さんが遊びに来たらどうでしょう。あなたはいきなり日本語で「座って下さい」と言いますか?もしそう言ってもその学者さんが座らなかったら、「うちに来た学者はバカだ」と思うでしょうか?
 犬は100位の言葉なら楽に覚える能力があります。「スワレ」と言って犬が座らなかったら、それは飼い主が正しく「スワレ」の意味を教えていないからなのです。それでも賢い犬は徐々に言葉の意味を学習していってくれるでしょう。でもそれは大幅な遠回りになるのです。
 私たちもはじめから正しい道でたどり着けた場所には、以後何の苦もなく行くことが出来るものですが、最初にぐるぐると道に迷ってしまった場所には、なかなかすんなりたどりつくことが出来なくなってしまいます。犬にも最初に正しく教えてあげれば迷いもなくすんなり行動を学習してくれるわけです。

 近代的、かつ科学的な犬のトレーニングにおいては、常に「行動を教えたあとにコマンドを乗せる」ことを重視しています。そして犬が自ら「ひらめく」ように誘導していきます。
 自分で考え、どうすれば飼い主が喜び、そしておやつを出してもらえるかを学んだ犬は自信と喜びを持ってその行動をするようになります。

ジャマイカの禁止

 ちょっとトレーニングをしはじめると、どうしても人にその成果を見せたくなります。オフ会や公園などで見せようとしがちです。しかしそういった場所は気の散る物が多くきわめて難易度の高い環境だということを忘れてはいけません。
 オフ会などでもコマンドを出し、犬が従わず、何度かコマンドを連発し、それでもやらないからと笑ってごまかす人をよく見かけますが、これは犬に非常に悪い学習をさせてしまいます。そんな環境ではやらなくとも許してくれる、あるいは気が向くときだけやればいいものだと判断するようになるのです。
私は照れ隠しをしながら「じゃぁ、まぁいいいかぁ」とごまかすことを「ジャマイカ理論」と呼んでいますが、これをやっていると限られた環境でしかオスワリすらしてくれないようになるでしょう。

 一度出したコマンドは実行しなければなりません。連発も避けるべきです。かといって安易に叱ってはいけません。そこで急に叱れば犬にとっては「話が違う」ということになり一気に飼い主に対する不信感が高まります。
 ではどうすればよいか・・・。
 ひとつは自信のないシチュエーションでは未完成なコマンドを出さないことです。「失敗を経験させない」これが上達の近道だからです。自宅で100%出来ても公園では無理でしょう。自宅の次は家の前の道路、それから人のいない公園、次に少し人のいる場所など、環境の難易度は徐々に上げていかなければいけません。オフ会などは最も難しい場所だと考え、失敗するコマンドを出さないようにしましょう。
 犬の心理状態にも常に注意を向けていることが大切です。興奮しやすい犬であれば特に注意します。平常心でなければ出来るものもできなくなるからです。
 環境の難易度が上がったら、コマンドの難易度は下げるのが鉄則です。そう言った場所では最も確実で簡単なコマンドを出してみましょう。そして上手に出来たら思いっきり、大げさに誉めてたっぷりのご褒美を上げて下さい。こういった練習によって、難しい環境でもコントロールが出来るようになっていきます。

コマンドのインフレに気を付けるべし

 何度名前を呼んでもこちらを見ない犬、オイデといっても知らんぷりをする犬、よく見かける光景ですが、原因はコマンドの連発にあります。一度で言うことを聞かないから何度も言ってしまうというのは飼い主の心境ですが、これが犬の立場に立つと「3回言われたらやろう」から「30回言われたらやろう」のようにどんどん悪い方に学習していってしまいます。
 また呼んでも来ない犬に対して大声を張り上げている方もよく見ますが、これも回数同様どんどん悪化していきます。ちょっと大きめに言っていたコマンドが最後には声を張り上げなければならなくなるのです。犬の立場で考えればとてもわかりやすい行動原理なのですが、人はしばしばこのコマンドのインフレに陥ります。
 日頃からコマンドは極力1回で聞いてもらう。そしてできるだけ小さな声で言うことを心がけましょう。犬の耳は人間より遙かに優れていますし、声を小さくすればするほど飼い主の声に集中してくれるようになります。一方大声を張り上げれば飼い主に注意を向けている必要が無くなるので、どんどん「聞いていない」犬になっていきます。

一番大切なコマンドとは?

 それではコマンドの中で最も重要なのは何だと思いますか?オスワリですか?マテですか?

 家庭犬のトレーニングにおいて最も重要なコマンド、それは「解放コマンド」です。通常は「オッケー」あるいは「ヨシ」という言葉が使われます。ただ「ヨシ」はしばしば犬をかわいがるときに「よしよし」と言う人が多く、犬が混乱するのであまりお勧めは出来ません。

 解放コマンドは何かのコマンドに対し、それを解除するときに使います。あるいはハウスマナーとしてコマンドをかけていないことであっても、それを許可するときに使います。
 例えば「フセ」をさせてから「マテ」をかけたとします。犬はいつまで待っていればよいのでしょう?それは次のコマンドが出るまでです。「マテ」のあとに「オイデ」が出ればそれに従うのがルールです。あるいは「オッケー」を出して自由にさせてあげた時も動いて良いわけです。

 この解放コマンドをしっかり意識して上手に使っていかないと、例えばマテであってもマテをかけて放っておいたら、犬がテキトーに自分で解除してしまうことになります。しかもその時間はどんどん短くなります。

 「ツイテ」といって散歩しているときに、いつのまにか勝手に臭いを嗅ぎに行ったり前に行くようであれば、これはもはや「ツイテ」ではありません。
 「ツイテ」は飼い主の横に付いていてもらうコマンドですので、その間は臭いを嗅がず、前に出ず、もちろんマーキングもしないで居て欲しいわけです。でもそれだけでは犬だってイヤになってしまいます。そこで安全や他人に対する迷惑がかからないことを確認してから解放コマンドを出し、犬を自由にしてあげることが大事になってきます。「ツイテ」の最中に最大のご褒美となるのは「オッケー」の解放コマンドなのです。

 犬が自分でかってに判断して解除するコマンドはもはや持続力を失っていきます。解放コマンドを上手に使える人だけが、他のコマンドもきちんと使いこなせるようになっていきます。


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